事業承継事例(2022年度版・2021年度版)
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています
津久見市中央町9の2 明和ビル1階 tel.0972-82-5554
美容室 風の音
30年以上もの長きに渡り、地域の女性の美を創造してきた『風の音』。台
風による水害やコロナ禍など、幾多の困難も乗り越えながら、母から娘
へ、美容師としての技術と心得を伝承。新しい〝風〞が吹く地域密着の美
容室がさらに成長できるよう、二人三脚で前へと進んでいく。

お客さんに愛されるお店を
自分らしく作ってほしい。
親/大野啓子さん
一生懸命に働く母の姿を
見て、決意しました。
子/大野文江さん
企業概要

津久見市中央町にある美容室『風の音』は1988年に大野啓子さんが開業し、30年以上地域の女性の美を創造してきた。2022年1月に無事、長女の文江さんに事業承継を完了。
承継年表
2020年センター登録、2022年事業承継
▼2021年9月 津久見商工会議所による事業承継診断を通じて当センターに相談。
▼2021年10月 エリアコーディネーターが事前ヒアリングで課題を整理。
▼2022年1月~2月 当センターの専門家派遣により事業承継計画書の策定。前代表が廃業届を税務署に提出。後継者が保健所から開業許可を受け、税務署に開業届を提出して事業承継完了。
長年培ってきた信頼と実績で多くのファンに愛されてきた
JR津久見駅前に開業したのは1988年。初代・大野啓子さんは「風に吹かれて髪の毛がサラサラと気持ちよく流れているような情景」をイメージして『風の音』と名付けた。
手に職をつけたいと一念発起して美容学校の門を叩いたのは啓子さんが37歳のとき。娘であり後継者の文江さんも同年代で美容業界に飛び込んだ。親子ともに”遅咲き”のスタートだったが、学校では志の高い若者に刺激され、学びも多かったそう。
「技術職は何歳になってもできる、とよく言われますが、体力勝負の仕事なのでそういうわけにもいきません。娘が一緒にやってくれるようになって、しっかりと経験も積んでくれたから、お店の将来を託そうと思ったんです」と啓子さん。文江さんとともに地元商工会議所の経営指導員に相談後、センターの専門家派遣で承継に向けた準備を開始。事業承継計画と承継後の経営向上に向けた取り組みスケジュールの作成等のサポートを受け、2022年1月、文江さんへの事業承継を無事に完了した。
開業から30年以上、地元を中心に根強いファンに支えられてきた啓子さんが、文江さんにこれだけは伝えたいと思うのは、「お客さんを大切に」「悔やまず、恐れることなく、目標に向かってほしい」ということ。美容学校卒業後すぐに『風の音』で修行を始めた文江さんは、「今はまだ母を超えることはできていないけど、私なりにお客さんと誠実に向き合い、帰る時にはまた来たいと思ってもらえるように努力していきます」と胸の内を語る。
”健康と美しさ”を提供する肌に優しい弱酸性美容を継承
事業の主力となるのは、人間の皮膚と同じ弱酸性の美容。開業当初は認知度が低く、良さを理解してもらえるまで日々説明を繰り返していたが、その努力が実り、現在は常連客の「99・99%は弱酸性を希望してくれます」と、啓子さん。文江さんは実践で師匠である母に教わるだけでなく、県内外で開催される講習会にも出かけて、女性を”健康的に美しく”ケアする美容法と手のみで施術するフェイスエステの技術と知識を習得。経験を積み重ねた今、自身の大きな財産となった。
ここ数年は、2人にとって大きな試練もあった。2017年の台風18号では店舗が浸水し、美容機材がすべて使用できなくなった。コロナ禍の行動制限により、1日の来店客がゼロの時期もあった。「台風では天井以外すべて土砂や水で汚れてしまって、総入れ替えに。でも、大工さんたちと一緒に片付けている最中にもお客さんが来てくれたんです。これから先、何があっても続けていけそうかなって前向きになれました」。客足が遠のいた期間もただ待つだけでなく、技術を磨く時間だと気持ちを切り替えながら、2人で乗り越えた。
「きれいになりたいと願う女性がいるかぎり、あらゆる可能性がある仕事。お客さんの心を掴み、その人にとって満足できて幸せな時間を提供できるように、もっと修行したいと思います」。

皮膚や毛髪の状態を健康に守り育む高品質・天然素材の商品を提供。

頭皮と髪の健康が一目でわかる毛髪チェックを行い、状態に応じたケアを行う。

30分かけてゆっくり施術を行うフェイスエステ。指先から伝わるぬくもりと施術後の爽快感がクセになると好評だ。

JR津久見駅前という立地の良さに加え、確かな技術とアットホームな雰囲気で多くのファンの心を掴んでいる。
「経営課題」の抽出と、「中期経営戦略」の策定支援
前代表の大野啓子さんから「一緒に働いている長女に代表を交代したいから開廃業の手続きや事業用資産の移転方法、贈与税がどうなるかを聞きたい」と津久見商工会議所の経営指導員に相談があり、事業承継診断後、センターに登録。啓子さん・文江さんと当センター・津久見商工会議所・専門家(税理士・中小企業診断士)が承継における課題の整理、目標・対策を一緒に検討して、承継の設計図ともいえる「事業承継計画」を作成した。
高品質の溶剤、最高の技術で、高満足度のサービスを継続
事業承継計画の「経営の見える化」で、「後継者へのメッセージ」として創業時の取り組みや思い等を語っていただき、後継者も今後の事業経営に対する決意を新たにされた様子。事業の将来像を共有する貴重な体験となった。承継計画における目標として、経営向上(収益向上)の取り組みとして、(1)既存顧客の売上維持と拡大。(2)付加価値を高め選ばれる美容室になる( 髪に優しいベル・ジュバンスと顔エステ)を定め、新たな歩みが始まった。