事業を継いで欲しいと思っていても、従業員のままで、経営者(跡継ぎ)として育てていない社長! ブロックCOとして、日々、親族内承継を考える社長からの相談に対応しています。そんな相談の中に、「高齢になり、来期からでも、代表を子供に変更したい。」との相談があります。

事業承継では、①人の承継、②資産の承継、③経営資源の承継が必要です。なかでも、③経営資源の承継(後継者の育成)が一番重要で時間も取ります。
会社の現状について社長にヒヤリングをする中で、後継者の肩書を聞くようにしています。聞いてみると、後継者の肩書が従業員のままの場合が結構あります。従業員から、会社であれば代表取締役社長に、個人事業主であれば代表に一挙に昇進するわけです。後継者も大変だと思います。
経営資源の承継(後継者の育成)には5年から10年は必要だと言われています。その中に、代表者のネットワークの承継があります。方法として、代表に代わって業界の会合への出席したり、金融機関と協議すること等があります。この場合でも、専務や常務、店長、副店長等の肩書がつくことで、後継候補者としての関係者の理解も進みます。
聞いてみると、後継候補者のなかには、まだ、自社の決算書を見たことがないという方もいます。でも、取締役や店長に選任すれば、そんなことはできなくなります。後継者にも、経営陣の一員として、自社の現状や将来を一緒に考えてもらいましょう。そのためにも、社長から「後継予定者をいつ取締役にしようか?」と相談された場合は、「早いにこしたことはないですよ。」とか「株の移転とは別に考えて早めに」と回答しています。
「自分が継ぐのだろうか」「いつ譲ってくれるのか」「いつまでたっても、仕事を任せてくれない」との声を後継予定者から聞くこともあります。この場合、経営者が後継者に専務や店長等の肩書を付け、仕事の一部を段々と任せていくことが必要だと思います。
相談を受けた中に、こんな事例がありました。
建設業を営む会社でしたが、すぐにでも、身内に社長を譲って、引退したいとの社長の意向でした。相談の時点では、身内の後継者は、まだ従業員のままでした。建設業の許可には、経営管理責任者の選任が必要です。経営管理者になるには、取締役としての5年以上の経験が必要です。この会社の場合、社長以外に5年以上の取締役経験者がいなければ、社長が、取締役として残り、経営管理責任者として残らなければ、建設業の許可を5年間は維持できません。身内に社長を譲り、すぐにでも社長を辞めたいとの社長の希望はかないませんでした。
個人事業の建設業の場合でも、生前の事業承継の場合、後継者が6年以上の専業従事者としての経験や、支配人としての経験が必要だそうです。
後継者に数年後には事業承継をしたいと思った時点で、後継予定者を会社であれば取締役に、個人事業主であれば店長や副店長に選任しましょう。肩書をつけることで、後継者本人に経営陣としての自覚をもってもらいましょう。肩書が後継者を育てます!