top of page
大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

杵築市大田沓掛2603番地1 tel.0978-52-3980

合同会社おおた夢楽(むら)
50年以上に渡り地域の生活基盤を守ってきた『小関石油』。80歳を超えた店主夫妻が廃業を検討していたなか、「無くしちゃ困る!」と立ち上がった住民自治協議会を中心に、石油関連企業、行政等が一体となって、地域唯一のガソリンスタンド存続プロジェクトを実現した
200811メイン人.jpg

地域の困りごとは、
いつも皆で解決してきた。

承継者・代表社員/吉廣和男さん

企業概要
20081外観.jpg

住民自治協議会「大田ふるさとづくり協議会」から生まれた合同会社。ガソリン・軽油、灯油の販売継続を実現するとともに、地域に暮らす高齢者宅の“見守り”を兼ねた灯油配達システムを実施している。

承継年表

2021年センター登録、2022年承継完了
▼2021年7月 杵築商工会大田支所からの紹介で、事業承継の相談受付。
▼2021年8月 「大田ふるさとづくり協議会」が事業承継の検討開始。事業継続のため、組織構築、事業運営見直し等、経営計画10年を作成。
▼2021年11月 事業承継会社として、「合同会社おおた夢楽」を設立。
▼2021年11月~ ガバメントクラウドファンディングによる資金調達。
▼2022年2月 合同会社おおた夢楽、大田SSとして事業開始。
▼2022年3月 事業承継支援完了。

地域の生活基盤を守るため住民による自治協が動いた

 2011年の消防法改正により、ガソリンスタンドの40年以上を経過した地下タンクは改修が必要となった。高額な費用の負担に加え、電気自動車の普及推進、若者の自動車離れも進み、特に過疎地ではガソリンスタンドの存続が課題となっている。
 大田地区も例外ではなく、地域唯一の『小関石油』は地下タンク更新期日前に廃業を検討。高齢化率55%で、交通手段を持たない一人暮らしや夫婦のみの高齢者世帯が多い地域だけに、お湯を沸かすボイラーや石油ストーブに使用する灯油の配達を担っていた同店が無くなれば、生活に支障をきたすことになる。基幹産業の農業のほか、林業や建設業も近場で重機への給油等ができないとなると、大きな痛手になることは間違いない。
 そこで立ち上がったのは、住民による「大田ふるさとづくり協議会」。発足から12年、常に地域の困りごとを皆で解決してきた同会は、「高齢者のために灯油配達だけは続けよう」と、実現に向けて動き出したのだった。「無くなると困る、というのが皆の共通の思いでした。でも、危険物だから協議会では販売できないとわかり、そう簡単な話ではなかったんです」と語るのは、協議会会長を務めている吉廣和男さん(67歳)。商工会に相談し、まずは危険物販売という大きな課題の解決策として法人設立を提案された。
 「協議会には退職やUターン組で、危険物取り扱いの資格をもっているという心強いメンツが揃っていたんです。5人が加勢すると言ってくれたので、会社を作って一緒に運営していこう、という方向性が決まりました」

”夢があって楽しい場所”を地域の新たな拠点に

 「まずは10年頑張ろう、という経営計画を専門家に作成してもらったことも、後押しになりました」。  
 吉廣さんを代表社員に、経営権をもつ中山田秀俊さん(66歳)、小野本良二さん(63歳)、古庄顕三さん(50歳)、前経営者の小関隆範さん(81歳)の5人が業務執行社員となって設立した『おおた夢楽』。次の課題となる地下タンク改修費用約500万円の調達は、3分の2は国の補助金を利用し、残りの自己負担分はふるさと納税の「ガバメント・クラウドファンディング(GCF)」利用で解決できた。「予想以上の寄付と、地元を応援したいという思いをいただきました」。返礼品なしを選択した139名には、大田にゆかりのある女優の財前直見さんを講師に迎えて地域の女性グループとハーバリウムを制作、お礼状と地元広報誌等を添えて贈った。
 石油関連企業、商工会をはじめとする行政、住民、地域出身者等々、多方面に支えられ好スタートを切った同社。地域住民とのコミュニケーションを兼ねた灯油配達システムを構築し、高齢者への見守りを強化するため大田地域の事業所23社と協議会とで「大田地域見守りネットワーク」協定も結んだ。
 「今以上に、住民の皆が気軽に集まり、支え合う、地域の拠点にしていきたい」。周囲の協力があってこそ実現した承継。地元愛を最大の強みに、〝夢があって楽しい場所〞を目指していく

200811オーブン.jpg

女優の財前直見さんに協力してもらって制作した“GCF返礼品プロジェクト”のハーバリウム。

200811オーブン.jpg

前経営者時代と変わらず、ガソリンと軽油、灯油を販売する地域唯一のガソリンスタンド『おおた夢楽』。

200811オーブン.jpg

GCF寄付金の一部を利用して、パソコンやプリンター、電話等の機器導入や、老朽化した施設の改修等も実施。

200811オーブン.jpg

地域住民とのコミュニケーションを兼ねた冬期の灯油配達。2週間に1回、各エリアを巡回する。

事業承継に係る課題解決に向けて、各種専門家派遣により事業承継を実現

事業承継の相談受付後、当センターは協力関係機関の中心となって、各機関との交渉や意見調整、とりまとめを行った。そして、中小企業診断士による経営計画作成支援、司法書士による会社設立手続き支援、社会保険労務士による会社設立後の規定等の整備支援、税理士による事業譲渡に係る税金の相談等を踏まえて、定期的に課題解決のための協議を継続的に実施した。地域住民と行政、関係機関の協力を得て事業承継を実現した。

地域唯一のガソリンスタンドが各種関係機関の協力で守られた

杵築市大田地域で唯一のガソリンスタンドが事業承継されたことで、一人暮らしの高齢者や夫婦のみの世帯が石油ファンヒーターやボイラーに使用する灯油調達に困ることがなくなった。また、基幹産業である農業用の機械やビニールハウスへの加温設備への給油、林業や建設業に使用する重機への給油にも支障を来すことがなくなった。地域の産業だけでなく、そこに暮らす人々の生活が守られた意義は大きい。

bottom of page