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大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

国東市国見町竹田津3889 tel.0978-84-0754

国見水産有限会社
東半島周辺の豊後灘を拠点に、先祖代々漁師を生業としてきた江本家。待望の男子を後継ぎとして育て上げた両親と、継ぐことに迷いのなかった長男を中心に、3世代の家族全員がそれぞれの役割の”長”として、漁業と家族の明るい未来のために力を発揮し合っている。
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継いでほしいからこそ、
誇りを持って仕事をしてきた。

父/江本正二さん

愛情と結束とスキルが
江本家の最大の強みです。

子・代表取締役/江本幸雄 さん

企業概要
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代々漁師として生計を立ててきた先。法人の設立は1972 年。魚貝の売買を目的として、漁師をしながら鮮魚の仲買・卸を並行しようと江本正二氏が発案

承継年表

2021年センター登録、2022年法人代表者交代
▼2021年12月 国東市商工会後藤課長(当時)よりセンターに相談。
▼2022年1月~3月 当センター登録専門家の中小企業診断士を派遣し、事業展開も含めた事業承継計画の策定を支援。
▼2022年7月 法人代表者を交代。

待ち望んでいた長男を後継ぎとして育て上げた

 伝統的な農林水産業システムが評価され、2013年、「世界農業遺産」に登録された国東半島宇佐地域。江本家はこの地、国東市国見町竹田津で代々、漁師を生業としてきた。『国見水産』を設立したのは1972年。漁業と次世代の将来を見据え、現在は漁を継続しつつ、水産物の価格と価値を上げる水産加工に主軸を移している。
 本家の長男として生まれた江本正二さん(75歳)と、妻の幸子さん(70歳)は、結婚して数年後に2人の娘に恵まれたが、常に頭をよぎっていたのは後継ぎのこと。
 「後継ぎは男、という時代。親族には次々と男の子が誕生しているのに、どうして…と、毎日祈るような思いだった」と2人は当時を振り返る。だからこそ、ようやく幸雄さん(41歳)が生まれたその日から「必ず後継ぎにする」という思いで育ててきたという。
 2人の思惑通り「後を継いで漁師になるのが当たり前だと思っていました」。周囲からも〝宝物〞のように大切に育てられてきた幸雄さん。「ずっと親元にいて他所様を知らないままだと、つまらない人間になる」という両親の方針で市外の高校に進学。一生懸命に働いて自分を育ててくれている親のため、週末は必ず帰省しては漁網の手入れや力仕事を手伝ってきた。
 「継いでくれるのは嬉しかったが、漁獲量や価格が落ちていく一方の漁業を、どういう形で渡せばいいのか。その答えが、水産加工でした」と正二さん。水産指導員に商品の方向性や販路などを相談しながら軌道に乗せた生業を、2022年8月、長男の幸雄さんに無事承継した。

毎日笑いながら精一杯働く江本家総出の『国見水産』

 主力はタコの加工品。市主催イベントで優勝経験のある唐揚げと酢だこ、たこ飯の素があり、運転中や歩きながら味わえる串刺しタイプも顧客の要望で登場した。
 「人がいる場所に出向いて売る」と、催事出店のみで販売。県内外の大規模な催事だけでなく、毎週末に地元の道の駅に出店するほか、幸雄さんと幸子さんは毎月、佐賀県と宮崎県にも出張。定期出店に固定客も多く、幸子さんは"名物母ちゃん"として各所で人気だ。隣町から江本家に嫁いだ知子さんは温和でしっかり者。3世代7人家族の健康管理を徹底するほか、1日平均50〜60個作成する「漁師の母ちゃん弁当」を担当。「知子に恵まれた蔵」という意味で、加工品部門の屋号「知恵蔵」は正二さんと幸子さんが命名した。正二さんの経理スキルは「専門家に帳簿を見てもらったら、完璧だとお墨付きをいただいた」と家族も脱帽。魚を扱わせたら江本家一という高校生の長男・壱聖さん(17歳)と、SNSやホームページなどの情報発信やチラシ制作などに長けている中学生の次男・一心さん(15歳)も、大切な即戦力だ。
 「家族全員、自分の担当のプロフェッショナル。誰一人として、欠けられては困る存在です」。
 幸雄さんをトップに据えた『国見水産』。いつでも笑顔で誇り高く仕事する大人たちの姿勢は、「後を継ぎたい」と次世代の子ども達にも魅力的に映っている。

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2017年「くにさきT-1グランプリ」で優勝した「たこの唐揚げ」。定期出店する催事には熱烈な常連客の姿も。

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老若男女に愛される加工品「たこの唐揚げ」「味付け酢だこ」、「たこ飯の素」

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加工品が業績を伸ばすなか、漁獲が減りつつあるタコ漁、定置網漁、ひじき漁など、代々の漁も守り続けている。

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手切りならではの絶妙な大きさと独自の味付け、こだわりの火入れで、多くのファンに愛される加工品が完成。

父から息子への事業承継計画書策定支援

法人代表交代の手続きは父が独学で準備したが、そのタイミングを図りかねており、国東市商工会後藤課長(当時)の勧めにより面談。将来の事業展開を含めた承継計画に基づき後継者と共に決めるべきと、計画づくりの必要性を指摘し、中小企業診断士を派遣、事業承継計画策定を支援することとなった。また、収益性向上のためには、業務や販路の見直しも必要と指摘した。

代表者の交代、数字に基づく事業展開の見直し

水産加工・販売事業が主になっているが、原価計算や設備投資計画については精査したことがなく、これらも派遣専門家と共に計算。納得感の高い展開イメージを抱くことができた。課題や問題点を親子で共有しながら話を進め、翌決算期に代表者変更の登記ができた。

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