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大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

玖珠郡九重町大字田野2415番地の628

大石林業株式会社
堅実な経営で業績をのばし、小規模の個人事業主としては異例ともいえる利益を出し続けてきた先代。取引先からの長年の信頼と経営力を、親子ほど年の離れた後継者に譲るため、法人成りし、じっくりと時間をかけ、お互いが望む最高の形で従業員承継を実現した。
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取引先を大事にし、職人達を可愛がる気概があれば大丈夫

被承継者・会長/大石光則さん

歴史と理念を踏襲しつつ、自分の道を確立していきたい

承継者・代表取締役/矢野孝則さん

企業概要
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2014 年に株式会社設立。主要顧客である九電グループ会社の九州林産(株)との継続的安定取引で小規模企業ながら年商8,000万円前後、営業利益、キャッシュフローも安定的に計上している。

承継年表

2021年2月 > 九重町商工会の紹介で大分県事業承継・引継ぎ支援センターに登録。
2021年4月 > 後継候補者として旧知の矢野孝則さんが入社。
2021年5月 > 顧問税理士を含む関係者協議の場で従業員承継スキームを提案、2023 年2月決算期を承継時期とすることで大筋合意を得る。
2022年1月~ > 承継に向け具体的条件面の検討に入る。
2022年12月 > 株式譲渡契約書作成支援。
2023年3月 > 株式譲渡契約書に調印し、事業承継完了。

業績は好調だが後継者不在、一時は廃業も視野に

 中学を卒業後、父親と同じ林業の道に入り、個人事業主として山の仕事に携わってきた大石光則さん(83歳)が、2014(平成26)年、妻の征子さん(80歳)とともに創業した『大石林業』。主要顧客は九電グループ会社の『九州林産』。九州電力から受託管理している山林から杉やヒノキの原木の伐採、集材、運搬車への積み込みまでを請け負う事業を主体に、60年以上の歴史を築いてきた。
 小規模の個人事業主としては異例ともいえる利益を出し、安定的かつ好調に業績を伸ばしてきたのは、従業員をもたずに林業のプロである一人親方を雇用するビジネスモデルを選択したことも一因。専属外注先として約10名の一人親方が、『大石林業』の信頼と実績を下支えしてきた。
 事業としては好調に成長してきたものの、大きな悩みの種は後継者不在。「継いでくれる者がいなければ、廃業やむなしという気持ちがあった。しかし、一人親方達の仕事も、その家族も守らなければならない。取引先への責任も果たさなければならない」と考えた大石さんは、創業当初から携わる一人親方の子息、矢野孝則さん(52歳)に承継を打診。当時、町内の種苗会社に勤務していた矢野さんは事業を受け継ぐ決意を固め、2021(令和3)年、社長候補として『大石林業』に入社した。

他人だからこそこだわった「安心」「信頼」の承継

 社長候補とはいえ、職人集団から見れば新人。彼らを納得させ信頼を得ること、そして仕事の辛さ、大変さを理解することが社長になるための最初のステップと捉えた矢野さんは、業務の中でも過酷な大木の伐倒の仕事を覚えることから始めた。「自ら経験することで、職人達に気持ちよく仕事をしてもらう方法を考えることができる。それが、仕事の効率化や家族を守ること、取引先からの信頼を得ることにつながると思っています」。
 危険を伴う仕事だからこそ、念入りな作業計画は必須。現場を下見して木を倒す順番や伐採した木材を集める場所、運搬車が入れる場所、動線などを確定し、安全に作業するための環境を造る「山見」のスキルも着実に上げていった。
 一時は廃業も検討した事業だが、「他人だからこそ」できるだけ好条件で安心して受け継いでもらうため、センターの支援のもと従業員承継への道すじを立てていった『大石林業』。専門家を交えての協議を重ねながら事業譲渡の準備を慎重に整えていき、2023(令和5)年5月、矢野さんが代表取締役、大石さんは新体制の会社を支える会長職に就く形で従業員承継を完了させた。
 「何も後悔はないし、これが正解だと自信をもって言える」と大石さん。従業員から社長就任した矢野さんは「会社の歴史と先代の理念を知ったうえで、自分の意思と心構えをもつ。もちろん、現実はいいことばかりではないが、自分を信じ、次世代を育成するビジョンをもつことが、承継者に大事なことだと実感した」と、従業員承継を振り返る。
 承継後、高校でのリクルート活動や人脈を通じてのスカウトなど、若い人材確保に着手。山を守り、育て、治水の手助けもする林業の誇りを、次世代につないでいく。

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樹齢約100年の杉の大木を伐採し、枝を落として規格サイズに切断した現場。運搬された山の資源は、建材や燃料に生まれ変わる。

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作業するための林道を作り、安全を確保してから杉の大木を伐採。現場1か所につき20日~ひと月で完遂させる。

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九州電力(株)が保有する山林が『大石林業』の主な現場。山林は資源であり、治水の役割も担っている。

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現場で伐採して切り揃えた材木を、運搬車に積載するまでが『大石林業』の仕事。

支援ポイント:従業員への事業承継を完了し、安定的かつ好調な業績を継続

九重町商工会を通じ、大石代表(当時80歳)から従業員矢野孝則さんへの事業承継支援の申し入れを受けセンター登録、支援を開始。顧問税理士も同席のもと、承継時期、条件面に係る協議を重ね、2023(令和5)年に代表者変更登記・株式譲渡契約を締結、事業承継を完了しました。矢野さんによる新体制になった現在も、安定的かつ好調な業績を継続しています。

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