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大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

豊後高田市香々地4017 tel.0978-54-2002

旅館 梅乃屋(株式会社あま乃)
豊後高田市香々地町の中心部に約100年続く『旅館 梅乃屋』。「料理がおいしい」「梅乃屋さんなら自信をもって紹介できる」と、地域の人々に愛され続けてきた老舗は、旅館&蕎麦屋という2本の柱を軌道に乗せるべく、家族総出で挑戦中だ。
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父親としての役割が何なのか、
自分も父から学びました。

親/天野栄一さん

将来性を見込める蕎麦を軸に、
老舗の新たな姿を築きたい。

子・代表取締役/天野成信さん

企業概要
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国東半島の割烹旅館。京都で修行後3代目料理長に就任した栄一氏と、大阪の料理屋・蕎麦割烹で修行した成信氏による四季折々の食材を使った料理で、地域の宴会需要などに応えてきた。

承継年表

2021年センター登録、2022年事業承継
▼2021年12月 後継者の天野成信氏が西国東商工会香々地支所で開催したエリアコーディネーターによる出張相談会に来訪され支援開始。
▼2022年2月~4月 センター登録専門家を3回派遣し、法人成りを含めた事業承継計画の策定を支援。
▼2022年2月 成信氏が、アトツギ甲子園に参加し一次審査▼2021年12月 を通過。
▼2022年6月 成信氏を代表とする新規法人を設立。
▼2022年7月 同市新栄に新店舗「胴搗自家製粉 手打蕎麦 地慈」開業。


地域ブランドの蕎麦を
老舗の新たな強みに

 「私が京都での料理修行を終えて家を継ぐために帰って来た頃は、高度経済成長の終盤で、皆が平均的に元気だった時代でした。この辺も人口が多く、お金の流れも豪快でしたね」と語る天野栄一さん(70歳)。香々地町で祖母の代から100年続く老舗の『旅館 梅乃屋』の長男として生まれた栄一さんは、幼い頃から「跡継ぎだ」と言い聞かせられながら育ってきたという。一方、息子の成信さん(38歳)は、「自分が言われ続けてきたからだと思いますが、私自身は親から家業を継いでほしいと言われたことはありませんでした」と振り返る。
 継ぐことを意識せずに過ごしてきたと言いつつも、大学卒業後、「いずれ、もしかしたら」という思いもあってそのまま大阪で暮らしながら料理を修行。31歳の時、家業を継ぐために帰郷し、自身曰く「色々なタイミングが重なった」2022年6月、『株式会社あま乃』に組織替えして代表に就任。家族とともに『旅館 梅乃屋』の看板を守りつつ、市内中心部に近い国道沿いに新店舗『胴搗自家製粉 手打蕎麦 地慈』をオープンさせた。
 割烹旅館と蕎麦屋。交わりはないようにも思えるが、「新たな強み」として栄一さんがたどり着いたのが、市の地域ブランドである蕎麦だったという。「魚が取れなくなってきたこの時代に商売するなかで、継いでいく子に残せるものは何かと考えたら、蕎麦だったんです。私は父からフグという大きな強みを残してもらいました。知らず知らずのうちに、父がしてくれたように息子にしてやれたんだと、今になって思います」

全国的にも珍しい胴搗(どうづき)製粉で新たなファン層を開拓する

 栄一さんは、大阪にいる成信さんに蕎麦打ちの修行を提案。その言葉を受け、専門的な知識と技術を身につけて成信さんが帰郷したのは31歳の時だった。
 「蕎麦屋をやりたい気持ちが日々大きくなっていたけど、帰ってきた当初はお客さんも多くて毎日忙しく、旅館との兼業は無理だと思ったんです。でも、コロナ禍で状況は一変。時間を持て余すくらいならと計画を立てたのが始まりでした」と成信さんは語る。
 商工会担当者やセンター派遣の専門家のアドバイスに耳を傾けていくうちに歯車が回り始め、計画は一気に前進。継ぐことを見越して栄一さんが購入していた土地に、蕎麦屋をオープンした。
 こだわりは杵でつく原理で蕎麦の実を粉にする「胴搗製粉」。全国的に石臼挽きの蕎麦が多い中、粘りのある食感と甘みや香りが引き立つ胴搗の蕎麦で、「豊後高田そば認定店」にも認定された。
 大阪出身の奥様・彩香さん(30歳)も、3人の子育てをしながら時間を縫って仕事をサポート。母・小由紀さん(60歳)は「地域の絆を大切に、誠実に、頑張ってほしい」と思いを語る。
 市内中心部から半島の海岸線を走る「恋叶ロード」でつながる2つの拠点。蕎麦でファンになってくれたお客さんが、老舗旅館に足を運んでくれる未来も描きつつ、「いずれは蕎麦の栽培にも挑戦してみたい」と意欲を燃やす。

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「かも汁ともりそば」と「裏巻き蕎麦いなり寿司」。定番から季節限定まで、早くもお客さんの心を掴んでいる。
● 胴搗自家製粉 手打蕎麦 地慈
豊後高田市新栄1378-2 tel.070-8511-8271

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フグや鱧、岬ガザミなど季節の幸を用いた料理を提供する『旅館 梅乃屋』。成信さんが帰郷してからは親子で厨房に立つ。

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『地慈』店内からガラス越しに見える作業場で、胴搗製粉した蕎麦を打ち、繊細な手つきで切っていく成信さん。

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宿泊者用の客室「杉の間」。宴会用の和室は座布団とテーブル席がある。

承継と後継者の新規事業を支える法人化と計画づくりを支援

長年共に店を支えてきた後継者が得意の蕎麦で昼営業の新店舗開業を計画。事業再構築補助金を活用して計画が進む中、将来的な事業承継にも関心を持ち、西国東商工会香々地支所伊藤指導員の勧めにより後継者がエリアコーディネーターによる出張相談会に参加。個人事業特有の資産・負債・許認可の移転の難しさなどを説明したところ、承継の手順、法人化の是非やその時期を新規事業の見通しも含めて検討することとなり、中小企業診断士の専門家派遣を実施した。

株式会社を設立、代表に就任した後継者が新店舗を開業

事業承継や法人成りを漠然と考えていたが、進め方やメリットが不明確なまま時間が過ぎていた。当センターの助言を参考に顧問税理士と相談、法人成りの手順や承継の時期、今後取り組むべき課題や問題点を親子で共有し、代表者70歳の節目に話を進めることができた。アトツギ甲子園への応募を通じて、違う角度から事業を見直すこともできた。新店舗は2022年7月に開店。新市場・新サービスの提供により、事業の幅も広がっている。

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