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事業承継支援事例 (2020年度版)
当センター(旧 大分県事業承継ネットワーク事務局)が支援した事業承継(親族内、従業員承継)事例です

竹田市竹田町134 tel.0974-62-3185

トラベルイン吉富
この地だからこその歴史と文化、自然を宿の強みにする
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次世代に託す旅館業のあり方を熟考するための準備期間です。

創業100周年、2代目 代表取締役社長/井上隆さん

100年の歴史の重みと親が培ってきたすべてを日々学んでいます。

3代目(修行中)息子/井上徹郎さん

企業概要
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登山一家が営む城下町のビジネスホテル。登山基地として登山客に地元の山々の情報を発信するとともに、屋上テント泊などSNSを利用した話題発信にも取り組んでいる。

承継年表

▼1919年
・材木店として故・井上富太郎氏が創業
▼1947年
・和室10室の吉富旅館に転業
▼1981年
・隆氏が代表に就任
▼1982年
・ビジネスホテル「トラベルイン吉富」新築
▼1989年
・有限会社トラベルイン吉富設立。代表取締役社長に隆氏、専務取締役に美智子氏就任
▼2019年
・事業承継計画書策定
▼2022年
・長男・徹郎氏承継(予定)

100年の歴史の重みを次世代へとつなぐために

 人口減少、高齢化、マーケット縮小が顕著なこの地で、旅館業として果たして存続できるのだろうかー。
「承継すれば彼らの代で今後30年、40年とこの仕事に携わる訳です。そのためにもっとも必要なことは剛柔両面の計画を立てることだと考えました」と語る代表取締役社長の井上隆さん。自身も29歳の若さで家業の旅館業を継いで、過疎化や高齢化などの社会情勢とともに生き、創業100年の歴史を守り抜いた。
 そんな姿を間近で見て育った長男の徹郎さんは、承継という言葉が現実味を帯びた頃から、意識の変化を感じるようになったという。
「100年の重みが理解でききないと思った時からこそ、両親の偉大さを実感しました。承継までの日々は学ばなければならないことばかりですが、理念を踏襲し、自分たちの代にどれだけつなげられるかが当面の課題だと考えています。」
 大分県南西部に位置する竹田市は歴史の面影を残す城下町。滝廉太郎が名曲「荒城の月」の構想を練った岡城跡があり、その城下町には江戸時代から変わらない景観や文化、歴史的建造物も現存されている。そして、周囲を見渡すと登山一家の井上家の宝である山々。北にはくじゅう連山、西には阿蘇山、そしてユネスコエコパークに登録された祖母傾大崩山系といった山々。そんな歴史と文化、自然に恵まれた地で「トラベルイン吉富」は旅館業を営み続けてきたのだ。

確実な理念があれば変化は恐れなくていい

 現在は地元企業で正社員として働いている徹郎さんの承継を3年後と決め、準備段階に入った井上家。徹郎さんとは高校時代からの同級生の真由子さんは女将の美智子さんの指導のもと、若女将として10年以上のキャリアを積み、宿の顔と頼ってもらえるほどの成長ぶりを見せている。
経営理念は、「安心・安全・清潔」が3本柱。理念の承継が共通言語として、同じ方向に向かうことを大切に、徹郎さんと真由子さんは「まずは、両親のやってきたことを学ばせてもらう為、毎日朝6時からミーティングを実践。喧々諤々ありますが、心を併せていきたい」と語る。
「家業を継いでいくために必要なのは革新。理念をベースに、時代に即した方法を模索し続けるパワフルな彼らは、すでに8割方は承継できているように感じています。変わらない為に変わり続ける。どんどんチャレンジしてほしい。」と2代目隆さん。
 竹田市が地域おこしのテーマとして10年前に掲げた「エコミュージアム構想(青空博物館)」の実現に尽力してきた両親の姿に魅了された2人は、私たちの役割は繋「つなぐ」こと。地元の人々、旅行客、登山客、アウトドア初心者など、趣味や好み、性格、年代が違うあらゆる人々をつなぎ、次の100年後までの歴史をつなぐ。その一歩として、遊休施設を活用した屋上テント泊や週1マルシェ、定額制の食事提供など、2人ならではのアイデアで実績を積み始めている。
材木店として創業。1942年に和風旅館として転業。そして2代目に承継した40年後の1982年、家業を継ぐ際に大分ではまだ珍しかったビジネスホテルへと転換。「つなぐ」為に変わり続けた隆さんだからこそ、変えてはならない理念・志と、変化を受け止められる心の柔軟性を強く訴えかけている。

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竹田市やその周辺の魅力を展示しているエコミュージアムギャラリー。今後は客室など館内のあらゆる場所をギャラリー仕立てにして、“青空博物館”の訴求力を高める予定だ。

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若女将の真由子さん。登山一家に嫁ぎ、現在は自身も山のガイドになるべく勉強中だ。

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銘木を贅沢に使用していた旧吉富旅館の面影を残す併設の食事処「庄屋」。地元の人や県外からの単身赴任客などが集い、情報収集や意見交換の場としても活用している。

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若夫婦が山宿のシンボルとして屋上キャンプ場を新設。コロナ禍において予想以上の反響を得た。

支援内容:代替わりの時期や方法など、事業承継までの道すじを具体化

 1919年創業の100年を超える老舗ホテル。2代目社長・井上 隆氏は、先代の死去に伴い1981年に29歳の若さで代表取締役に就任した。65歳を過ぎた頃から長男の徹郎氏へ事業を承継することを考え始めた。家族間で事業承継の話し合いができないまま苦悩していた時、竹田商工会議所を通じセンターへ相談があり、徹郎さんへ事業承継にあたって具体的な方法(株式評価、株式の移転方法、承継の時期等を事業計画書として作成)について支援した。

支援効果:スケジュールを見える化し、承継後の競争力強化策を図る

 センター、会議所、専門家の税理士の専門チームで支援を実行。社長、後継者、女将、若女将の4人を含め3回のヒアリングを実施。経営課題、承継上の問題点・課題を洗い出し、事業承継計画書を策定。スケジュールの見える化を図った。経営方針の明確化、承継後の競争力強化策として、ビジネス客主体の客層から登山者や竹田を訪れる観光客へシフトさせることを決定。承継時期を令和4年8月とし、今後の成長発展が大いに期待される。

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