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事業承継支援事例 (2020年度版)
当センター(旧 大分県事業承継ネットワーク事務局)が支援した事業承継(親族内、従業員承継)事例です

豊後高田市新地1670 tel.0978-24-0055

有限会社中村機工
町工場のプライドは培ってきた技術で地元に貢献できること
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継ぐと言ってくれた時、
本当に嬉しかったし、感謝しかないですね。

義父/会長 中村寿志さん

大切な家族のために働くことの意義を
日々実感しています。

娘婿/代表取締役 伊妻良浩さん

企業概要
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主に自動車関連企業との取引があり、機械設計製作(組立ロボットライン等)、精密機械加工、荷役装置設計製作(各種コンベア、リフト等)を低コストで対応できるのが強み。

承継年表

▼1983年創業、2019年事業承継
▼2019年
代表者名義を寿志さんから良浩さんへ変更後、商工会議所へ相談。要請を受けたブロックコーディネーターが面談し、株式の移行方法や事業計画の策定等の専門家(弁護士、中小企業診断士)を派遣。
▼2020年
専門家(中小企業診断士)を再び派遣し、事業承継計画書案を提示。今後の安定的な事業継続に不可欠な対策と支援方針を共有する。先代から後継者夫妻へ株式譲渡を完了。

一代限りから一転、事業承継を実現

 1980年代後半から1991年にかけて、日本国中が熱狂的な好景気に湧いたバブル期。戦後復興期から高度経済成長期と、日本経済とともに歩んできた電気機械工業等の産業もまた、この時代そのものの姿を映し出していた。
 そんな時代が来ることを予感していたのか、現会長・中村寿志さん(74歳)が「これからは機械一本で勝負する時代だ」と故郷の地に『有限会社中村機工』を創業したのは1983年。バブル景気に突入して以降、地元に事業所があった電気大手をはじめ、豊後高田市かなえ台の「大分県北部中核工業団地」に集積する各企業、そして、地元の自動車関連企業を中心に宇佐〜中津〜豊前〜行橋と、一代で取引先を広げていった。
「子どもは女の子ばかりだし、そのうちの誰かに婿取りをして継いでもらおうと考えたことは一度もなかったですね。きっと自分一代で終わるんだろうな、と……」。
 軌道に乗り、順調に事業を拡大していった実績はあるものの、子どもに男子はおらず4人姉妹だったため、家族間で後継者についての話題が出ることは一切なかったという中村家。寿志さん自身さえ諦めていた後継者問題だったが、思いがけず急転する時がきた。
 福岡県で証券マンを経験後、将来を模索していた伊妻良浩さん(46歳)と当時お付き合いをしていたのが中村家の長女・眞由美さん(46歳)。2人の結婚が、事業承継を決定づけることになったのだ。

知識ゼロからの挑戦で技術と誇りを身につける

「4人姉妹の長女なので、父の仕事や後継者のことは頭の片隅ではずっと気になっていたけど、なるべく考えないようにしていたんです」と語る眞由美さん。結婚を視野に入れるようになった頃、良浩さんにある提案をもちかけた。
「私の家は自営業だから、一緒に手伝うっていう人生もあるよって言ってくれたんです。同じ働くなら家族のために働いてみたい、そしてそれが自分のやりがいになるんじゃないか」と、良浩さんは躊躇なく承継を決意した。文系で機械については知識ゼロ。それでも「手伝うことは必ずある」と受け入れてくれた寿志さんの言葉の後押しもあり、入籍と入社という人生の転換期を27歳で迎えた。
 即答はしたものの、畑違いで経験のない業種に加え、今まで自分の周囲にはいなかったタイプの古参の職人達とはコミュニケーションの取り方もわからず、技術を“盗む”という昔ながらの習得法にとまどうなど、苦戦は想像以上。また、“長女の婿”という立場からの遠慮があり、義父に対して意見することや感情をぶつけることも上手にはできなかったという良浩さん。それでも地道に、職場環境の改善に着手し、若手の人材育成を行うための準備と自身の技術向上に努めるなど、新代表としての自覚と責任を具体的な行動として示し始めている。
「10年に1回くらいしか、本音を言わない」と眞由美さんに苦笑される寿志さんが口にした「継いでくれると言ってくれた時、本当に嬉しかった。息子じゃないからこその距離感も良かったと思える」という本音。『中村機工』先代が積み上げてきた信頼と実績を受け継ぎ、“技術で社会や人の役に立つ”誇りある仕事を担う2人の今後にとって、何にも勝るエールとなるだろう。

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地元同業他社のなかで先代がいち早く導入したというレーザー加工機。経年により買い替えを検討しているが、コロナ禍での新たな設備投資の是非を再検討することになり、タイミングを翌年に持ち越すことを決めた

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自他共に認める“機械親父”で仕事第一主義の寿志さんは今なお現場に立ち続けている

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「ボルトの名前さえ分からず入社当時は本当に苦労しました」と語る良浩さん。承継により、担い手としての責任を日々感じている

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年代モノの機械はプライドの証

支援内容:株相続の方法から、長期的なビジョン策定まで支援

代表者名義は交代したものの今後の事業運営についての不安があったことから、会社運営のしくみ、相続・承継までを網羅できる専門家(弁護士・中小企業診断士)を選定。経営理念の必要性、従業員のマネジメント等、中小企業経営に関する基本的な事項も含めてアドバイスし、ビジョンを策定した。事業承継補助金の申請も検討したが、コロナ禍で投資の是非を再検討。現在は経営革新計画策定に取り組んでいる。

支援効果:経営者としての自信がつき、新たな取り組みに繋がった

社長として承継したものの何から学べばよいかわからない後継者に対して、株式承継、設備投資、人材確保、販路拡大、社内の一体感、社長のリーダーシップなど、多くの課題を整理し手順を示すことで、具体的な行動を促すことができた。中長期的な経営の方向性を確認し、今後のスケジュール等を明らかにするとともに、さらなる課題を抽出し、ものづくり補助金申請・経営革新等、商工会議所・取引銀行らと連携した新たな取り組みに繋げた。

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