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事業承継支援事例 (2020年度版)
当センター(旧 大分県事業承継ネットワーク事務局)が支援した事業承継(親族内、従業員承継)事例です

日田市大山町西大山5216 tel.0973-52-2873

森梅園
独自の栽培技法で高品質の梅と梅干し、女一人でもできる
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自分で梅の苗木を
育ててみないと
本当のことは分からない。

親/森文彦さん

一つ一つに
付加価値を付けて
売上UPを狙いたい。

子/森あゆみさん

企業概要
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梅園は大山町(1961年開園)と天瀬町(1989年開園)にあり、「南高梅」、「七折小梅」、約20年掛けて開発したオリジナルの「美咲梅」など7品種を栽培。他にスモモやブドウの栽培も。

承継年表

1961年創業 2022年事業承継(予定)
▼2018年
『森梅園』の森文彦さんが娘のあゆみさんに事業を引き継ぐ覚悟を決める。あゆみさんは商工会の事業承継セミナーに参加して事業の強みを再考し、行うべき事項と行わない事項の選択と集中を実施。
▼2020年~
事務処理、発注管理などをスタッフに引継ぐ。今後は支払料金の確認業務の自動システム導入や高級梅干しの販売開始。スモモやブドウの栽培面積の縮小。加工や外作業女性スタッフの増員などを予定。

初植栽から約60年、愛情注ぎ大切に育む

 「梅栗植えてハワイへ行こう」のキャッチフレーズで名高い日田市大山町の農業協同組合。1961年から始まった“梅栗運動”は従来の耕種農業から高収益の梅を水田に、栗を畑に植え、所得の向上を図ろうという、いわば農業改革運動でもあった。
 その大山町で梅の栽培、製造加工を手掛ける『森梅園』は運動がスタートした年の1961年に創業され、当時、17歳だった森文彦さん(77歳)も父と一緒に挑戦することに。ところが最初に植えた苗に雑種(よくない品種)が混じっており、出荷できず、植え替えを余儀なくされたが、その間、諦めることなくトラック運転手をして家計を支えたという。その後、自家製堆肥での土づくりにこだわり、手作りの梅木酢液での低農薬に努めるなど、愛情を注ぎ大切に育ててきた。特により多くの実に太陽が当たるよう磨いてきた剪定のスキル、とりわけ収穫作業の軽減のため、枝を横に伸ばす技術は妥協を許さず、町内で“一番の腕を持つ”といわれるほど高い評価を得ている。
 そんな文彦さんの熱い思いに呼応するかのように、妻の加茂子さん(71歳)は剪定作業を手伝う傍ら梅干し作りの達人に。十分に熟した梅を使い紫蘇も種から育てる力の入れようで、4年に一度の全国コンクールでは最優秀賞に2回輝き、全国にファンを持つ。「お父さんが作る梅は実の張り方が特別で漬け込んだ時、梅酢のあがり方が違います。日本一の梅干しができるのは最高の梅のおかげだと思っています」と夫に感謝する。

承継予定は2年後、まずは“技術の伝承”

 1961年に梅を植えて約60年、栽培面積230a、年間生産量30tを誇るまでになり、現在7品種を栽培している。同居する3姉妹の次女、あゆみさん(46歳)は就農して24年、梅干し作りを手伝ったり、事務作業を一手に担ってきた。文彦さんは電動バサミに頼っての剪定を続けているが、寄る年波には勝てず、「(娘)3人のうち、誰かが継いでくれたらなあ・・・」と密かに願う一方、約1000本もの梅の木の剪定を行う大変さを誰よりも痛感、「私の代で終わるのかな・・・」と廃業も頭をよぎっていたという。
 「20代の頃から梅園の仕事を手伝ってきて、お客さんから誉められるとうれしくて、それが“糧”となって積み重なり、いつしか事業承継したいと思うようになりました。私の気持ちを伝えたところ、両親の第一声は“女にはできんぞ”でした」と笑う。小学生と保育園児の2人の娘さんを一人で育てているあゆみさん、両親が抱く男手がないことへの心配は痛いほど分かるし、自身も「女の私一人で何ができるのだろうか?」と自問自答の日々を送ったこともあった。拭いきれない不安はあるものの、それ以上に父が一代で築いてきた梅園、母の漬け込む梅干しを、なんとか“森あゆみの梅、梅干し”として引き継ぎたいとの思いは増すばかりだったという。
 その後、両親もあゆみさんの固い決心を知り、2年後を目途に腹を決めた。あゆみさんは商工会の事業承継セミナーに参加するなど準備を進める一方、重要な経営資源であり最大の課題でもある“技術の伝承”、梅栽培技術を父から、梅干し加工技術を母から計画的に引き継ぐべく梅園と加工場を行き来している。そして承継後の売上げアップにつながる新商品の開発にも余念がなく、両親からヨシッ!と言われる日まで、ポジティブに逃げずにやっていくつもりだ。

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お客さんから注文を受けて初めて樽から梅干しをザルに上げる。梅酢の水気を切り、1粒1粒梅の裏表を見ながら丁寧に詰め込んでいく。

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梅栽培の魅力を文彦さんに尋ねると「やっぱり品種改良やね」と笑顔で答えてくれた。

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自家製の赤紫蘇をたっぷり使い、ミネラル塩だけで漬け込まれた、無添加、無着色の昔ながらの梅干し。柔らかくてとてもデリケートだ。

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熟しても落ちない縁起が良い「招福梅」や梅のコクとサッパリ味で食欲をそそる南高梅の「梅肉」など。

支援内容:計画的に承継を進める事業承継計画書を策定

1961年に森文彦さんが創業した『森梅園』は高品質の梅栽培と梅干し等の加工技術は、大山町でトップクラスの梅の栽培農家。後継者候補に娘さんが3人いるが重労働作業が多く自分の代で廃業を考えていた。次女のあゆみさんが父親の梅栽培技術と母親の梅干し加工技術を途絶えさせてはいけないと承継を決意。商工会の事業承継セミナーに参加して計画的に進めていくことを理解し、センターの専門家派遣による事業承継計画書策定支援を利用した。

支援効果:選択と集中により事業を見直し後継者の負担感軽減に繋がった

事業承継の意義や手順等を説明。「事業承継計画書」の策定を通して計画的に進めていくことが確認できた。まずは剪定技術と加工品技術を早期に習得する重要性の気づきを得て、そのための体制づくりについてアドバイスをした。後継者のあゆみさんは両親が築き上げた梅園すべてを引き継いでいくことに負担と不安を感じていたが、選択と集中が必要であることを説明。一部事業を見直し、後継者の負担感が軽減、事業に邁進できる体制を整えた。

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