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事業承継支援事例 (2020年度版)
当センター(旧 大分県事業承継ネットワーク事務局)が支援した事業承継(親族内、従業員承継)事例です

佐伯市城南町18番1号tel.0972-22-1333

穴見畳店
世界に類を見ない日本独自の伝統文化を受け継ぐ
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嬉しく思う反面、
需要が減る一方の現実に
正直、不安が大きかった。

親/穴見正年さん

当面は継続を目標に、
地道な売り上げアップを
目指したいですね。

子/社長 穴見和宏さん

企業概要
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創業100余年、佐伯市内と近隣市域をエリアに4代続く老舗の畳店。事業承継を機に和室の「建具・表装具ワンストップ張替サービス」に取り組むなど、認知度・利益向上を目指す

承継年表

▼ 2018年
正年さんが佐伯商工会議所に事業承継手続き等を相談
▼ 2019年
商工会議所とセンター、中小企業診断士による専門チームで支援開始。事業承継補助金を用いた事業計画の相談から各種作成書類のサポートを受ける。代表者名義を正年さんから4代目・和宏さんへ変更し、新規事業に参入。新体制がスタートした

売り上げ減少の時代に承継という挑戦を決めた

 日本文化とともにあり、日本独自の生活様式を語る上でも欠かせない存在である畳。平安時代の絵巻物や江戸時代の浮世絵などに描かれていることからも分かるように、古来より日本人には馴染みが深く、身の回りにあるのが当たり前のものでもあった。
「自分が畳屋を継いでから最盛期の頃は年間の売り上げが4000万円。多い月で約50枚の畳を納品していました」とは3代目である父・正年さん(76歳)。高温多湿の日本において気候風土に合い、素手や素足の触り心地もよく、い草の匂いにも癒されていたのは遠い昔のこと。西洋文化の影響を受け、日本人のライフスタイルや家そのものの造りが変わってしまったことが大きな要因と言えるだろう。年間の売り上げは加速度的に右肩下がりとなり、承継を考える頃には最盛期の半分になっていた。
 業界全体が振るわず、将来的に好転する可能性があるかもわからない状況下の『穴見畳店』。承継を決めた時期のことを、長男の和宏さんは「決め手は、両親が高齢になり、継いでほしいと言われたから。斜陽産業に不安もありましたが、気持ちを切り替えて承継に臨みました」と振り返った。
 プログラマーとして県外で働いていた和宏さん。畑違いだが、作業全体が機械化されていることや、若い頃にアルバイト感覚で家業の手伝いをしていた経験もあったことから、入社1ヶ月で仕事の全体像を捉えることができた。

幅広い層に魅力を伝え次世代への承継も視野に

 2013年から父のもとで修行を始めたものの、想像以上の重労働に仕事の厳しさを感じた和宏さん。さらに「尺貫法が難しくて……。今でも携帯電話を使って単位を置き換えてから説明したりしています」と日々奮闘している。
 具体的に承継の話が進み始めたのは2018年の年末。税務関連の必要な手続きから承継後の事業展開の方向性、事業承継補助金の利用法など、商工会議所とセンター、中小企業診断士の専門チームの支援のもと、長男の和宏さんを4代目として、父、次男の俊明さん(39歳)、そして事務方として穴見家を支える母・柳子さん(71歳)とともに2019年8月1日、新体制でスタートした。
 承継にあたってもっとも心配していた売り上げ減少の現実を解消すべく取り組んだことは、エリア拡大と業務拡大のために事業承継補助金を使った設備投資と宣伝広告の強化。既存の佐伯市全域に加えて近隣市域を新ターゲットにするべくホームページを作成して周知を図り、市内に配布する折り込み広告は部数を倍に増やして2万部印刷。工場の外看板も新たに設置した。
 そして、すでに始めていた畳の殺菌乾燥サービスや障子・網戸の張り替えサービスに加えて、新たな事業展開として襖の張り替えサービスにも着手。自動ふすま張替機を導入し、短時間で空気ムラのない張り替えを可能にするなど、作業効率のアップと付加価値の高い“建具屋的”な新サービスを幅広い顧客層に提供できるようになった。
 将来の目標は「畳の需要が減る中で、どんな形で次世代に繋げられるのかを常に考えています。まずは続けることを最優先に、毎年3%ずつ売り上げを伸ばしていきたいですね」と意気込む。

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高齢者世帯が多い佐伯市内では襖の張替の依頼も多かったため、設備導入でニーズに応えることが可能に。畳、襖、障子、網戸すべての張替サービスができるようになったことで競合他社との差別化を図ることにも成功

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畳職人歴50年の正年さんのもとで修行を重ねた和宏さん。技術とともに日本文化を承継し、次世代へのバトンを繋ぐ

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コンピュータ式の畳の機械を導入して畳の製造から張り替えまでスピーディに行う

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細部の作業は機械ではなく人の手で行う

支援内容:創業100余年の老舗の畳店、4代目への事業承継を支援

支援に入った時点で長男・穴見和宏氏は父親で3代目の正年さんのもとで次男・俊明さんとともに5年間の修行を積み、正年さんは和宏さんへの事業承継を考え始めていた。承継の準備の必要性を感じ、佐伯商工会議所を通じてセンターへ相談があり、和宏さんへ事業承継にあたっての具体的な方法(関係者の理解、開廃業手続き、事業用資産の移転方法、後継者教育を事業計画書として作成)について支援した。

支援効果:新たな事業展開に着手し、同業者との差別化を図った

専門家(中小企業診断士)と社長、承継者との話の中で、事業承継の時期をめどに新事業に取り組むことで売上増を図ることを決め、事業承継への不安が和らぐ。事業承継補助金を利用した設備投資、承継者の経営者研修として佐伯市の創業セミナーの受講等を決定。自動ふすま張替機の導入により、きれいなふすま張替が短時間で行えるようになり、作業効率も格段に向上、張替を手作業で行う同業者との差別化を図ることができた。

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