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大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

中津市大字角木3-1 tel.0979-24-8522

建築業 クスノキ
代々、棟梁を務めてきた建築一家の誇りは、日本建築の技”網代編み”。「この技術だけは、守ってほしい」という3代目の思いを受け、歴史と伝統を受け継ぎつつ、感性のおもむくまま建築業に向きあう4代目。お互いを認め合うからこそ実現できる将来を見据え、親子ならではのチームワークで承継を目指す。
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初代から受け継いできた
伝統技術を残したい。

親/楠木彰二さん

人とは異なるプロセスで
唯一の建築を極めたい。

子/楠木彰吾 さん

企業概要
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1986 年彰二さんが創業、長男も設計士という建築一家。一般建築業として住宅や店舗のほか、大手住宅メーカーからのリフォーム下請けも手がける。本店は3代目自宅にあるが、後継者自身の拠点として至近に事務所を入手。

承継年表

2020年センター登録、支配人登記の確認
▼2019年12月 中津商工会議所事業承継推進員による事業承継診断
▼2020年1月 エリアコーディネーターの訪問。要件の確認
▼2020年3月 専門家派遣(中小企業診断士)による事業承継計画策定開始(~5月)
▼2020年4月 支配人登記の確認
▼2021年1月 個人事業の開設(かつて雑貨店を営んでいた屋号に建設業を加えて復活させた)
▼2021年5月 新事務所用地の取得(将来の事業承継に向けて、現在事務所を建築中)

建築業の承継の難しさを知り、支配人登録制度を活用

 建築業を営むには経営業務の管理責任者等、国土交通省もしくは都道府県知事の許可が必要。法人の場合は会社名義に許可が下りているため、代表名義の変更など比較的スムーズな承継が可能だが、個人の場合は話が異なる。それは、許可の要件を満たしているのが「個人事業主」その人のみであるから。個人の名義に対する許可であるため、たとえ親子であっても承継に関してはそのまま名義をスライドすればよいというわけにはいかず、本人が条件を満たして新たに建築業の許可を申請する必要があるのだ。
 建築業の登録や承継方法等について地元商工会議所に相談した楠木彰二さん(69歳)と次男の彰吾さん(43歳)。そこで初めて「これはちょっと大変だな」という思いが頭をよぎったそう。 
 個人事業主として許可を取るには自身の名義での経営経験年数や、一定数以上の新築物件を建てる等の要件がある。しかし、建築業の個人事業主である彰二さんの雇用下にある彰吾さんは、経験としては十分だが個人としての実績では、要件を満たさないという状態だった。
 「単純に考えていただけに、個人の場合はただ継ぐという話じゃないのか、と本当に驚きました。親の仕事を継ぐ=名義を変えるという話ではなく、年数や棟数など必要な条件を満たすまで、自分の名前でゼロから積み上げていかなければ許可してもらえないなんて、思いもしませんでした」。
 彰二さんにも「受け継がせたい」という強い気持ちがあったため、なるべく早く独り立ちする方法について担当者と話し合い、支配人登録制度を使う方針に決まった。

"一匹オオカミ"として、あえて個人事業主を選択

 順調に行けば、個人事業主として建築業の代表になれるのは2年後。今は代表としての自覚と技を磨く時期だと捉えている彰吾さんは、「法人化も検討したけど、大がかりな仕事の時以外は時間がかかっても全部自分一人でやるというのがポリシー。自分の道を行くために、現状は個人事業主という判断になりました」と語る。
 彰吾さんと結婚して17年になる祥子さん(40歳)は、「自分を貫くタイプだから、相談もせずに突き進むこともあるんです(笑)。でも、好きな仕事をしてくれれば、それでいいかなって思います」。3人目の子どもが生まれるタイミングで、「美容室を作ったから、店をやれって言うんです。赤ちゃんを抱っこしながらですよ!」。美容師の祥子さんは、彰吾さんが「自分のやりたいように作った」店内を見渡しながら、そう笑う。
 「優しくて、欲がなくて、ただ自分が体を動かして仕事させてもらえるのが嬉しいって…。変なところばかり主人に似てますね」と次男を温かく見守り続ける母の弥生さん(67歳)。「自分のスタイルでやってくれればいい。ただ、自分の手で編む一生ものの網代編みだけは守り続けてもらえたら」と、彰二さんも思いを込める。
 ものづくりが大好きで、時間があれば家に関する様々なモノを作っていた彰吾さん。自分が描くイメージを膨らませながら、独立の機が満ちるのを待っている。

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楠木家の代々の棟梁が大切に守ってきた伝統の網代編み。職人のこだわりは世代を超えて受け継がれていく。

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祥子さんの美容室とテナントが並ぶ、彰吾さん一家の自宅。正面の大きなクスノキが目印だ。

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新事務所を大胆に改装中。「イメージはない」と言うが、彰吾さんの脳裏には完成図が見えているようだ。

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二級建築士の資格を持つ彰吾さん。ギャラリー兼アトリエだった建物を自身の事務所として購入し、現在改装中。

個人の建築業に必要な手続き等、最短での承継方法を提案

法人成りを検討したが、個人事業主としての承継を選択。支配人要件を満たさないため次回更新時の承継は断念するものの、その後要件を満たした段階で現代表の更新期間を残したまま途中で交代するか、次回の更新満了時に交代するかは、今後の動向を見て判断すると方針が決まったため、支配人登記を急ぐ(2020年4月20日、申請済)。以前雑貨店&caféを経営していた店舗も視察し、持続化補助金申請による利活用を検討した。

建設業の承継に必要な要件を確認し、準備に着手

当初、代表者交代のみで簡単に引き継げると考えていたが、建設業開業要件の経営経験が不足したため、支配人登記を済ませ基準を満たした時点で承継する方針が定まった。また、事業主となるまでに、新たに取り組みたい事業についても専門家と整理しながら検討を進め、商工会議所の協力下で補助金申請にチャレンジすることができた。

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