大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています
大分市日吉町4-3 tel.097-558-0113
株式会社ヤマナミ麺芸社
父親から受け継いだ会社の屋号を変え、「麺産業に特化した食品メーカーになる」というビジョンで歩み始めた『ヤマナミ麺芸社』。
麺業界の概念を変え、豊かな食で地域に貢献するために、第三者承継によって”強く”、”大きく”成長を誓う。
麺産業に関わる事業をつなげながら、地域と共に育つメーカーになりたい。
代表取締役/吉岩 拓弥さん
企業概要
大分県を中心に、熊本や佐賀にラーメン店や製麺業など幅広く事業展開を行っている。グループのミッションは「地域のお客様の豊かさに貢献する」。麺事業を軸に成長し続けている。
承継年表
1994年創業 2015年より事業承継開始
▼2015年6月 大分県事業引継ぎ支援センターに登録。登録後、積極的に譲渡希望案件(ノンネーム)情報を提供。
▼2019年6月 中津市の製麺事業を承継。
▼2020年10月 佐賀県の製麺事業を承継。
▼2021年8月 別府市の食料品製造事業を承継。
ビジョン実現のために新たな挑戦を決意
1994(平成6)年、別府市で「ふくやラーメン」を開業した『ゴールドプランニング』が前身。「最初で最後の親孝行をしよう」。創業者である父の急死により、吉岩拓弥さん(43歳)は弟の正純さん(40歳)とともに、25歳で事業を引き継いだ。
承継から10年が経った頃、「麺産業に特化した食品メーカーになりたい、という新しいビジョンが生まれた」と語る吉岩さん。2018(平成30)年、『ヤマナミ麺芸社』に社名変更、本社所在地も移転して新たなスタートをきった。
現在、大分県内をはじめ九州各地でラーメン店舗と製麺業、食品加工業務、観光ギフト事業など、"麺"を軸に多角的な事業展開を行っている同社。2015年6月には大分県事業承継・引継ぎ支援センターに買(譲受)希望の登録を完了し、現在まで大分県と佐賀県で計3社の事業承継を実現している。
「中小零細企業の事業承継は、親族内であっても第三者であっても、取引先から従業員、顧客までのすべてが社長に付いている、という点では同じです。その関係性を第三者が築いていくというのはやはり大変でした。でも、ゼロを1にする新規事業とは違い、事業承継は1あるものを2や3にしていけるもの。大変さよりもメリットのほうが大きいと思っています」。
関係性を築くために、被承継者のもとへ直接足を運び、じっくりと対話する。相手の希望やこだわりと自身の事業発展への思いなど、お互いが納得できる形になるまで時間をかけて擦り合わせを行っていった。
外からの視点で新たな魅力に賭ける
製麺とラーメン製造のノウハウがある上で、さらに事業を展開する足がかりとなったのが、2019(令和元)年に承継した中津市の乾麺等の製麺事業。生麺とは別の、新たな間口ができるというメリットがあり、乾麺ならではの賞味期限の長さは観光土産としての伸び代が期待できる。前オーナーにも母親が生み出した「かぼす麺」という商品を故郷に残したい、という思いがあり、両社の思惑が一致した最初の成功例だ。2例目は佐賀県の製麺所。他県センターとの連携によって、スムーズな承継手続きが行われた。
3例目は、別府市の「鉄輪豚まん本舗」。地元の仲良し主婦たちが始めた店の承継だ。吉岩さんが生まれ育ち、幼い頃は自転車に乗って遊びまわっていたルーツの場所。餃子部門も手がけていた吉岩さんに声がかかり、地元のB級グルメが取引先も味も常連客も、以前と同様の形で受け継がれることとなった。
「地域おこしのために仲間内で小さく始めた店。承継という形で継いでもらえるとは思っていなかった」。承継時に聞いて、印象に残っている言葉だという。「売り手と引き継ぎたい者の見方や考え方はちょっと違うと思いました。外から見ると、当事者の受け取り方とは違う、たくさんの魅力があったりします。そういう話をしたら、すごく喜んでくれました」。
父の背中を見て育った少年時代、将来の夢は「社長」だった吉岩さん。現実の大変さを噛み締めながら、弟やスタッフとビジョン達成に奮闘を続ける。
豚骨、味噌、太麺と、多彩なコンセプトのラーメン店を県内外に展開している。自社製麺所では通常の麺から特注麺まで製造。
現在、正社員60名とパート・アルバイト300人を雇用。ラーメン店でのバイト経験後に正社員として入社希望する人材も多く、同社の魅力や成長の一端を担うほどに成長している。
自社店舗で使用するだけでなく、九州エリアを中心に他社への卸販売も行う原点の製麺事業。いずれは原料生産にも関わり、加工、販売まで自社で行うことを目標にしている。
本社に飾られた飛行船のイラストは「未来の麺業界の専門商社」をイメージして作成。陸空海のどんな環境でも成長できる強さと、地域への貢献、時代の変化に対応していく柔軟性も一枚に描かれている。
支援内容:譲渡希望案件ノンネーム情報を都度提供し、承継実施
案件紹介後、代表が興味を持った案件のトップ面談を実施。成約に至らなかったケースもあるが、「麺を軸に周辺事業を多角化したい」という代表の思いを具現化する可能性が高い譲渡希望者の情報を都度提供。麺類製造業者、食料品製造業者等と条件交渉を進め、2021年8月時点で大分・佐賀両県3案件の事業承継を実現した。
支援効果:廃業を視野に入れていた事業の第三者への承継が実現した
当センターだけでなく、他県のセンターとの連携による事業承継も実施。センターの譲渡希望案件情報は小規模・零細事業所の案件が多く、少額の資金で事業多角化を可能にした。個人経営を中心に廃業を防止するためにも、有力な買い手として今後も案件情報の提供を継続的に行っていく。