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事業承継支援事例 (2020年度版)
当センター(旧 大分県事業承継ネットワーク事務局)が支援した事業承継(親族内、従業員承継)事例です

臼杵市深田118 tel.0972-65-3555

後藤製菓
新旧の文化を響かせ合い伝統を守り続ける
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事業承継前だが、
全てを任せられている。
息子を誇りに思う。

親/後藤重明さん

良い形で引き継げる。
早期に発展して
飛躍していきたい。

子/後藤亮馬さん

企業概要
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大正8年(1919年)創業、2019年に100周年を迎えた臼杵煎餅の製造元。製造・直売を行なう本店では、工場見学やせんべいに蜜を手塗りする伝統製法の体験もできる。

承継年表

1919年創業、2021年事業承継予定
▼2019年9月 顧問税理士から事業引継ぎ支援センターの紹介を受け、事業承継診断を実施。
▼2019年11月 ブロックコーディネーターが、臼杵商工会議所と連携して支援を開始。
▼2020年3月 諸手続きを含め事業承継計画を作成し、事業承継準備を開始。
▼2021年7月 個人事業として、事業を承継予定。

父・息子ともに満を持しての事業承継

 噛みしめるとやさしい甘さが口いっぱいに広がり、しょうがの爽やかな香りが鼻を抜けていく、銘菓・臼杵煎餅。その起源は約400年前。臼杵藩主稲葉領主が江戸時代の参勤交代途上の食料として、米・麦・粟・ひえ等を材料に作り上げた携行食だったと言われている。やがて小麦粉が主原料となり、かつて臼杵が一大産地であったしょうがを味付けに加え、地域の文化として受け継がれている。
 臼杵煎餅の製造元の中で最も歴史が長いのが、『後藤製菓』である。創業大正8年(1919年)、今年で102年目を迎えた。現在代表を務める四代目の後藤重明さん(70歳)は、今年7月に、息子の亮馬さん(30歳)に事業承継を行う予定だ。
 重明さんは亮馬さんに「お前は跡継ぎになるんだぞ」と、常に言い聞かせてきたと言う。それは、計らずも22歳の若さで代表を務めることになった自身の苦労を、息子にはさせまいという親心からであった。素直にすくすくと育った亮馬さんには、その言葉が自然と刷り込まれていたようで、物心がついた時から跡継ぎとしての自覚があったのだとか。重明さんの刷り込みは功を奏し、亮馬さんは大学卒業後、予定通り『後藤製菓』に入社。今年で9年目を迎える。
 事業承継については、創業100周年にあたる2019年に行う予定で、2018年から準備を進めていたが、周到な準備を整えるため2年先送りに。そして今年7月、満を持しての事業承継となる。

変わらないことと変わっていくことを追求

 亮馬さんは入社後、「社長はすべての仕事を把握するべき」という重明さんの教えにより、ひと通りの仕事を経験してきた。そんな中で、今まで深くは知らなかった臼杵煎餅の素晴らしさに気付いたと言う。「臼杵煎餅の歴史と伝統、そして手塗りの製法も、もっと評価されていいはず、と悔しい気持ちが芽生えてきたんです」。臼杵煎餅に対する熱い思いを募らせた亮馬さんは、創業100周年記念に「新たな客層にも向けて、何か新しいものを作りたい」と、臼杵産の有機素材を使用して作る新ブランド「IKUSU ATIO」を立ち上げた。逆から読むと大分臼杵(OITA USUKI)。世界→東京→大分→臼杵という情報や流通の流れに対し、「臼杵から世界へ発信していく」という思いを込めてネーミングした。
 新ブランド商品はミニサイズにした臼杵煎餅に、しょうが・かぼす・きなこ、チョコレ—トでアレンジを加えた「百寿ひとひら」のほか、オーガニックシロップとジンジャーパウダーもある。洗練されたロゴマークとパッケージデザインにもこだわっており、評判は上々だ。
 「現代表は臼杵煎餅をやわらかくした商品や、アイスをはさんだ商品などを開発し、新しい挑戦をしてきました。そのベースがあるからこそ、私も新しい挑戦がしやすいです。『後藤製菓』で働けて本当によかったと思っています」と話す亮馬さん。その考え方や仕事ぶりに対して、重明さんは「よく頑張っていると思います」と、太鼓判を押す。
 亮馬さんのモットーは「不易流行」。「変化を重ねていくことに、ずっと変わらないことの本質がある」という芭蕉の言葉を胸に、絶えず変化を繰り返し、臼杵煎餅の伝統を守っていく。

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本店の店内には臼杵煎餅をはじめ、重明さん、亮馬さんが開発したバラエティー豊かな商品が並び、見応え充分。

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本店では、煎餅が機械で焼き上げられる様子や蜜を塗る作業を見学できる。

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『後藤製菓』が製造する臼杵煎餅はすべて、熟練の職人技によって刷毛で蜜が塗られている。

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「臼杵煎餅」(右)と創業100周年記念プランド「イクス アティオ」の商品(左)

支援内容:事業の「見える化」と「磨き上げ」を多面的に支援

臼杵商工会議所による事業承継診断の後、2019年12月から翌年3月まで、計3回の専門家派遣(税理士)を実施、承継にあたっての課題整理と事業承継計画の作成を支援した。また、経営にも不安を感じていた後継者のために、大分県主催「おおいた後継者育成塾」の受講や、大分県信用保証協会の専門家派遣事業の活用など、事業承継ネットワーク構成機関による様々な支援策も紹介しながら、事業の「磨き上げ」に向けた取り組みを支援した。

支援効果:自信を持って事業承継に取り組むことができるようになった

事業承継診断、専門家派遣による「見える化」を行った結果、取り組むべき課題が明確になり、後継者の漠然とした不安が解消された。事業の「磨き上げ」については、後継者育成塾での学びを通し、自社の現状把握と将来ビジョンの確立に向けたきっかけができた。また、今年1月には、中小企業庁主催の後継者限定ピッチイベント「アトツギ甲子園」で、全国15名のファイナリストに選出されるなど、新規事業への取り組みも加速している。

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